参照8:柔道療法とは 

当院の柔道療法は、柔道のエッセンスのみを取り出した1時間以内で終了する楽しい柔道教室で、性別・体格・疾患・柔道経験を問わず、患者・職員が入り混じって楽しむクラブ活動である。モットーは「勝負に拘らず、自然体で楽しい柔道」で、厳しい修練の場ではない。

著者の行っている柔道療法は、柔道着を着用し組み合う事で直接相手の、気力、体力、技術レベルを感じられるユニークなリハビリテーション技法と考えている。

教室の流れとルールを簡単に紹介する。

  1. 柔道着に着替え、十分な準備体操と受け身を行う。
  2. 一組が道場中央で自然体で組み合い(競技柔道のように組手争いはせず最初から組み合う)、体捌き(たいさばき)を習得しつつ、自由に技を繰り出し攻防を行う(乱取り)。
    その際、他のメンバーは観戦者にまわる。
    指導者とメンバー、メンバー同士など組み合わせを変えながら順次乱取りを行う。
  3. 技が決まれば無理に防ごうとはせず投げられ受け身をする。
  4. 敢闘したり、美技が決まればメンバーから自然に拍手が沸き起こる(共感的雰囲気)。

相手を投げ倒した時の『快感』、逆に相手からあざやかに投げられても、やられたと思いつつも『爽快感』を感じられるのが柔道療法の特色である。

柔道未経験者には、柔道着の帯を利用し、「前後左右に引いたり、緩めたりして相手の体勢を崩す」柔道の基本動作をゲーム感覚で体験してもらう。初心者でも1~2回参加すると技が掛けられるようになる。未熟でも技が掛けられるようになれば、指導者である著者が投げられ、「人を投げ倒す柔道の快感」を初期から味わえるようなプログラムにしている。

1回の乱取りは通常の柔道では4~5分間行われるが、当院柔道療法では1~3分間で双方の状態を観察して指導者が「止め」と言った時点で中止となる。乱取りによる「負荷が掛かり過ぎ」と思わる場合は脈拍を測定し、本人に頑張り過ぎの状態である事をフィードバックする。

このようなソフトな柔道療法であるが、うつ病や統合失調症の有効なリハビリテーションとして当院では認知されている。

柔道療法の奏効機序としては、1)柔道は頭(前頭葉)ではなく錐体外路系(ドーパミン系)を賦活する、2)闘争により気力(ドーパミン系)が湧く、3)美技を褒める事により報酬系(ドーパミン系)が賦活される、と推察している。

関連記事:しおさいニュース 柔道療法を浜田から!(WEBしおさい掲載)

参照8:柔道療法とは  への2件のフィードバック

  1. 西川 正 のコメント:

    大変うれしいコメントを有難うございました。

  2. 佐々木武人 のコメント:

    前略
    失礼致します。本日(2月4日2014年)、貴殿のWebを拝見しましたら、なんと小生が関心を持っていた柔道による運動療法についての実践内容が掲載されておりました。先生が既に精神障害を持った方々へのリハビリのために柔道を採用している事、非常に敬意を表する次第です。
    小生は大学教員をリタイアしておりますが、研究がてら現役中に、学齢期の知的障害者を対象に精神・心理面並びに健康体力面の向上等を目的に、またその動機付けのために柔道を教えておりました。また、大学の附属病院・精神科の患者さんへ運動療法として柔道等を用いて触れ合う機会をもっておりました。また、稚拙ながらも研究論文をも書き表しております。
    先生の医学的専門的立場からの柔道による療法のあり方の一端を学ばせて頂きました。そのご努力にご苦労を感じますが如何でしょうか?
    柔道によるリハビリテーションは確かに効果が期待されることは事実ですね。
    広く柔道による療法を広めたいと考えておりましたが、リタイアしてクライアントと触れ合う場所と機会に遠ざかっている現在です。
    また学術的な研究をもしようということで、日本武道学会では昨年から障害者武道研究分科会部門を設置し、研究の試みが行われつつあります。

    先生の益々のご発展を祈念し、これにて失礼します。 草々

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