参照24  : 気分安定薬の作用機序

気分安定薬は炭酸リチウムとバレリンなど抗てんかん薬由来の薬物の2種類があるが、その作用機序は大きく異なる。炭酸リチウムは細胞内伝達セカンドメッセンジャー(IP3, DAG)に対する抑制効果により気分安定化作用を発揮するのに対して、バレリンなど抗てんかん薬由来の薬物は細胞膜安定化作用及びGABA神経系増強作用により気分安定化作用を発揮する。即ち炭酸リチウムは錐体外路症状を惹起したり、抗精神病薬との併用で錐体外路症状を増悪する場合があるが、抗てんかん薬由来の薬物にはこの作用はない。アリピプラゾール増量と同時にリチウムを追加処方したことでこのような重篤な錐体外路症状が惹起された可能性がある。従って入院症例29の治療に関してはリチウムを中止し、気分安定薬はバレリン単剤とした。