外来症例5 脳性麻痺の高度不安・過緊張状態

Key word    脳性麻痺    リスペリドン液    薬物急速離脱

10代女性

養護学校に入学し、4月から入寮した。周囲の速度に合わせて行動するのが難しく、ハンデイキャップがある事の辛さや、将来の不安を口にする事が多くなっていた。いろいろな人に相談する為、かえって情報過多となり、混乱する様子であった。もともと朗らかでお喋りであったが、10月になり喋らなくなり、発熱の為実習が途中から出来なくなった事を気にして不安混乱が高まった。「皆が喧嘩をしているよう」「皆の目が怖い」など言い周りを気にしてビクビクするようになった。

症状・治療経過

初診時(外来担当医師)
3日間ほとんど眠らず、昼間も1時間程度ウトウトするだけの緊張過覚醒状態であった。食欲低下、活動性の低下がある。問いかけに対して「歯がない」など非現実な応答があるが、外出時などはむしろビクビクせず過ごせ、統合失調症的な不穏はみられない。
リーゼ10mg、エバミール1mgが処方された。

初診2日後(以後 筆者担当)
発語なく、目はカッと見開いている。エバミールにより睡眠は4時間程度取れるようになっていた。しかし緊張過覚醒状態が持続している。抗不安薬(リーゼ)による脱力がある。抗精神病薬による過覚醒の治療が必要と判断して、リスペリドン液0.5ml、就床前投与とした。

同3日後
医師:怖い?> 患者:はい。
医師:何が?> 患者:・・・・・(無言)
発語は可能となっているが、不眠は継続している。リスペリドン0.5mlを 10回分処方し保護者に1日最大量1.5mlまで増量して経過観察して貰うように依頼する。

5日後
リスペリドン液1mlで夜間1回トイレに行くだけでグッスリ眠り、翌朝はすっきり覚醒する。すっかり穏やかな表情となっている。
8日後
保護者のみ来診。すっかり落ち着き病前の状態に戻った。リスペリドン液0.5mlとデパス(0.5)1Tを14日分処方し、以後保護者と緊密に連絡を取り合い、リスペリドン液を頓服的に使用し、デパスに置換。処方薬飲みきりで、治療終了とした。

診療のポイント

従来診断では心因反応、DSM-IVでは短期精神病と診断されるであろうこの症例は、発症後3年時点では服薬なしで精神症状は全く認めていない。知的障害や脳性麻痺など抗精神病薬に脆弱性が想定される症例の場合、漫然と抗精神病薬の服薬を継続するべきではない。リスペリドン液のような半減期の短い薬物を使用し、短期間で治療終結を心掛ける事が重要である。