外来症例16 動悸を主訴に受診したてんかん(情動発作)

Key word  健康成人 不整脈 脳波検査 診断確定

20歳代女性

社会人となり3年目。数年前(2-3年前?)より動悸が始まった。きっかけ、発病状況は覚えていない。仕事を始めた頃からストレスを感じる事はあったが、ストレスには強い方だと述べる。睡眠時間は仕事上不規則とならざるを得ない。動悸は疲労度に関係なく出現する。動悸は何となく精神的なものから来ているのではないかと思って当院を受診した由。

初診時
問診表に「動悸数年前から」とだけ記載あり。病歴からは不整脈が疑われる。色々な感情が湧き上がった時に動悸は起きるような気もするが、発症状況ははっきりとは分からないと述べる。症状としては「胸がドキドキして不安な感じ。周囲からの言葉が入って来るが、抜けて行く。ドキドキするので、それに集中して入って来ない感じ」であるが仕事に支障はない。自分で脈をみて不整脈があるのは判ると言うが、診察時には不整脈は認められない。

診断・治療
身体疾患の除外の為、次回ホルター心電図(24時間継続モニター心電図)を行おうと提案した。
精神疾患としてはパニック障害を疑ったが、初発時の状況をまったく覚えておらず、パニック障害は否定的。神経症傾向や精神病的な印象をまったく受けない為、「動悸が主訴で内科ではなく何故精神科を受診したか」と改めて聴くと、動悸出現時「何とも言えない不快感がある」ので当院受診したと言う。この一言で情動発作(ictal emotion)を疑い脳波検査を行った。
脳波検査時、発作を起こし、irregular spike & wave complex を検出する事が出来、てんかんと診断。また同時記録された心電図では不整脈は認めなかった。

抗てんかん薬処方し、次回の診察日を予約とした。
セレニカR400mg 1T 昼食後

経過
初診以降受診はなく、治療効果は不明。

診療のポイント
本症例の診断に際しては、最初は精神的な原因で生じる不整脈やパニック発作を疑った。しかし仕事に支障を来たさず、神経症的傾向も認めない症例の精神科受診に違和感を覚えた。受診理由を再度問うたところ「何とも言えない不快感を伴う動悸である」との言質を得た事から「情動発作」を疑い脳波検査を行った。てんかんの場合脳波検査で発作波が出現しない場合の診断確定は困難だが、明らかな発作波の出現があれば診断は確定される。不整脈は発作時には出現しておらず、発作時の意識変容により、動悸と自覚された可能性がある。適切な問診により、脳波検査を行った事で確定診断に至った。